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主に研究関係のメモ

mazpod 004 show notes

mazpod ep 004 の show notes (full version). Anchor ではURLまで文字数にカウントされるのか、全然入らなかったのでこちらに。

内容の分布はこんな感じ(上図): 航空機の分類・力のつりあい・飛行機の各部名称1・座標系の話・各部名称2

  • 航空機の分類: 軽航空機(気球飛行船)と重航空機(固定翼機回転翼機
  • モンゴルフィエ (Montgolfier) 兄弟による有人熱気球初飛行は1783年だった
  • 浮力
  • (動的)揚力: 「前進速度がないと得られない」と言ってるときの「前進速度」の主語は「翼」。ヘリコプタのホバリングでは機体は前進していないが、ローターブレードという翼は前進(実際には回転)している。
  • 固定翼機: 滑空機(グライダー)飛行機
  • 回転翼機オートジャイロヘリコプタ
  • 羽ばたき機: 人が乗れるものはたぶんない
  • ドローン…無人航空機 (UAV, UAS)英語の drone はミツバチのオスでした(スズメバチじゃなかったしスラングでもなさそう)。
  • 飛行機の力のつりあい: 「ヘリコプタにはジェットエンジンがついてない」実際にはピストンエンジン(レシプロエンジン)のものとガスタービンエンジンのものがある。後者はほぼジェットエンジンと同じで、ただしジェット噴射の反力で推力を得るのではなく、ギアを介して軸を回転させて、ローターを動かしている。このようなエンジンはターボシャフトエンジンと呼ばれる。
  • 飛行機各部の名称: まず大きく機体 (airframe) と推進装置 (powerplant) に分かれる。ちなみにアメリカで航空機の整備士は A&P (airframe & powerplant) と呼ばれる。機体は、主翼 (main wings)・胴体 (fuselage)・尾翼 (empennage, tail)…水平尾翼 (tailplane)・垂直尾翼 (fin)・降着装置 (landing gear) などに分かれる。さらにコクピットや各種系統(システム)がある。
  • 剛体の運動: 6自由度 (6 degrees of freedom, 6 DoF)。並進3自由度・回転3自由度。並進は前後・左右・上下。回転はロール(横転)・ピッチ(頭の上下)・ヨー(左右の首振り)。
  • 動翼 (moving surfaces): エルロン(補助翼)エレベータ(昇降舵)ラダー(方向舵)。正直、日本語で呼ぶことは稀なので、この show notes のためにググるまで日本語の存在を忘れていた…。ただ、日本語の縦書きの本を読むと確かにこういう言葉は出てくるので、知っておいてもいい、かも。
  • ここでキャンバ (camber) の話をすべきだった。直感的にわかるかなーとは思うけれど、翼型が上に凸な形状になる(=キャンバが増える)と、揚力は増える(抗力もちょっと増えるが)。動翼は、局所的な翼型のキャンバを増やす効果があると考えることができる。
  • エレベータ (elevator): 水平尾翼の後端につく。操縦桿を引くと、翼型の後縁が上に曲がり、尾翼に下向きの揚力が生じる→重心周りでは頭上げのトルク
  • ラダー (rudder):垂直尾翼の後端につく。右のラダーペダルを踏むと、上から見た翼型の後縁が右へ曲がり、垂直尾翼に左向きの揚力が生じる→重心周りでは右へ首を振るトルク
  • エルロン (aileron): 両主翼の後縁につく(翼端付近が多い)。操縦桿を右へ倒すと、右のエルロンが上がり・左のエルロンが下がる。右では揚力が減少し、左では揚力が増大する⇒重心まわりには右回転(後ろから見て時計回り)のトルク。
  • 『左と右っていうのか普通は飛行機だと』: 飛行機では何かの数を数える時左から数える。たとえばエンジンが4つあるジャンボジェット機 (Boeing 747) ならエンジンは左から順に1, 2, 3, 4となる。機長と副操縦士の座席も左と右。ただしヘリコプタでは右が機長(歴史的な経緯は忘れたがググると出てくると思う)。
  • 後ろから見て時計回り: 時計回りの回転を CW (clockwise), 反時計回りを CCW (counterclockwise) と呼ぶことも多い。いまググって知ったけど British English では anticlockwise (ACW) って言うんだ…?聞いたことなかったわ…
  • 操縦桿:「桿」と言ったが、実際には戦闘機でなければWとかUとかMみたいな操舵輪が多い。ただしエアバス系の旅客機は戦闘機みたいなサイドスティック。これは操縦系統とも関連しており、鋼線ケーブルで動翼を人力駆動していた時代・油圧ポンプを経由した時代(ジャンボジェットくらいまで)を経て、今は電線で舵角を指令するフライ・バイ・ワイヤ (fly-by-wire, FBW) の時代となり、操縦装置の配置自由度が高まっている。これはデジタルコンピュータの発展に伴う自動操縦制御の変遷とも関連している。
  • 高揚力装置 (high-lift device): フラップ (flap)・スラット (slat)
  • スポイラ (spoiler): エアブレーキの話は忘れていた。こういうのが付いてるかどうかは飛行機による。大型ジェット旅客機ならほとんどついていると思うが…。グラウンドスポイラは着陸(タッチダウン)後の減速で使うので、見たことがある人も多いと思う。このとき同時に、エンジンの横のカバーが開いているのは、スラストリバーサ
  • 翼端デバイスウィングレット (winglet) など
  • ロール (roll)・ピッチ (pitch)・ヨー (yaw) とは、飛行機の機軸周り・左右軸周り・鉛直軸周りの回転(自転)。回転の正方向がどちらなのかは、まず軸のベクトルを考えてから右ねじの法則で考えれば良い。
  • 座標系 (coordinate system, coordinates) の話: 通常、動かないグローバルな座標系(世界座標系・地球座標系・慣性座標系)と、飛翔体とともに移動するローカルな座標系を考える。後者はいくつもあってよい。たとえば機体座標系(動物の胴体座標系)は重心位置と2ベクトルで決められる(残りの1ベクトルは外積から)。飛行機の場合はロール・ピッチ・ヨーの関係で前・右・下にxyzをとる。生物でも同じ定義でもいいが、下がzは直感的にわかりづらいので変えることもある。自分のグループは後ろ・右・上をxyzにしていた。更に、胴体座標系以外に「ストロークプレーン座標系」や「翼座標系」もとることがあるし、「骨1本の座標系」や「羽根1枚の座標系」もとってよい(ロボット的・マルチボディダイナミクス的)。
  • 翼型 (airfoil, aerofiol): 翼の断面形状 (wing cross section)。ある平面で翼を切った際の断面。「ある平面」は…流れ方向または翼長方向のベクトルと、背腹方向または鉛直方向のベクトルとでなす平面、あたりか。
  • 『トンボの翼型は平面でザラザラした表面を持つため、低レイノルズでの飛行能力は非常に高くなっている』といまの日本語版ウィキペディアの[[翼型]]にはあるが…{{要出典}}ですね
  • 翼幅 (wingspan) と翼長 (wing length)。鳥の翼長は、概ねこの図のような感じ→ WikiMedia Commons の図。ただし Conflicting Terminology for Wing Measurements in Ornithology and Aerodynamics なんていう論文も出ているくらいに混乱はある模様。
  • 翼弦長 (chord length): ある翼断面について、前縁と後縁の距離。スパン方向位置によって翼弦長が違う場合、それらの平均をとったものを平均翼弦長という(そのまんま)。
    • この話では平均翼弦長はアスペクト比につなげているが、翼の Reynolds 数(前回参照)を計算するときの代表長さも平均翼弦長を使うことが多い、と言うのを忘れていた。
    • この話では「翼弦」を連発しているが、実際に話すときは「コード」とか「コードレングス」を連発する。
  • アスペクト比 (aspect ratio): 翼の横方向の幅を縦方向(流れ方向)の長さで割った比率で、無次元。翼幅/平均翼弦長 (b/cm)、または翼長/平均翼弦長 (R/cm)。平均翼弦長が不明で翼面積がわかっている場合は、翼幅^2/翼面積 (b2/S)。
  • 翼平面形 (wing planform): 単に平面形ともいう。楕円が翼幅方向の吹き下ろし均一(揚力係数均一)で最適だが、適切なテーパーをかけた長方形…要は台形でも似た性能が実現できて製作は容易なので、現代の旅客機はほとんど台形。翼端に向かうほど翼弦が小さい方が空気力学もよいが、構造的にも良いことは直感的にわかるはず。更に羽ばたきにもなると…
  • 後退角・前進角: [[翼平面形#後退角効果]]
  • 上反角と下反角: 上反角効果(後退角・高翼)
  • 高翼・中翼・低翼。実例として生物はだいたい高翼。ジェット旅客機は低翼。戦闘機はかつては中翼だったかも。最近のは高翼。輸送機も高翼。高翼機はむしろ下反角を持つこともある(軍用練習機・輸送機や猛禽)。猛禽はさらに前進翼ぽい。
  • 最近 Nature に出ていた論文 = Harvey et al., 2022: 少し前にそこそこ読み込んで、内輪の勉強会で紹介したので、この podcast で論文紹介してもいいな…といま気づいた。
  • 今回漏れた話: キャンバ(単に忘れていた)や2次元翼と3次元翼の話あたりはあったほうが良かったか…。他にも飛行安定性(トリムとは、とかタブなども)とか、エンジンやプロペラなど推進関係の話とか、各種システムなど、いくらでもあるが、空気力学ではなく航空機の話になるな…もうなってるが。あと、実際の研究方法についてのお話(風洞実験や数値計算)ももっと入れたほうがよかったかも。まぁ際限なく長くなるんでね…。とはいえ、自分が好きな Burt Rutan の航空機の話はしていきたいところ(無給油無着陸での世界一周を初めて成し遂げた飛行機 Voyager とかそういう)。

 

今回はクリック的なノイズやクチャクチャ音・ブレスなどを減らそうとして lowpass filter したことで、たしかにそれは減ったけど全体的な音質もボンヤリしてしまった。もとの音源は残ってるけどやり直すのが面倒なので当面はこれで…