論文の英文校閲サービスで直されたもの
初めて論文原稿の英文校閲サービスを使ってみた。このようなものが直されたよ、というのを共有するのはそれなりに有益と考えるので列挙してみる。
何か質問があればここか twitter の @dynamicsoar にきいてくれれば答えます。
前提
- 英文校閲サービスは American Journal Experts というもの→ http://www.aje.com/
- 対象は research article で、letter ではなく full paper.
- 投稿先はイギリスの journal で、British English が preferred. したがって英文校閲サービスでも British English を選んだ。いま思うと、American Journal という名前についたサービスなのにこれは間違ってたのかもしれない。つまり、他に British の方が得意な業者(おそらくイギリスの)があったのかもしれない。
- なお、このサービスの場合、料金と納期は words 数で変動し、かつ、納期は毎日変動していた。Standard と Premium を選べたが、予算の関係で時間がなかったため、Standard でかつ高速オプションを付けた。分量が多かった(11000 words程度)ため、6-7万円くらいだった。納期は通常で1週間程度、高速にしたら数日(今回は2日)。Elsevier の English Language Editing というのも金額的には似ていたようだった。
- 修正対象はお金を追加で払えば増やせるが、今回は main text のみとし、journal のスタイルに合わせる修正も依頼しなかった。ファイルとしては、急いでいたので、図などを全部コメントアウトした .tex のソースと、参考のために図なども入った PDF をアップロードした。
- 分野は工学と生物学の学際領域(バイオメカニクス)なのだけれど、いちおう biology の bioenginnering だったか biotechnology だったかを選んだ。
修正箇所のパタン
直された箇所は4パタン程度にカテゴライズできると思われる。つまり、
- 英文法のミスや typo (e.g. a/the/plural, do/does)
- 文法というより意味的におかしい点
- American English としてはよいが、British English としてはおかしい点 (e.g. minimize –> minimise)
- 口語的に過ぎて、academic writing に適していない点 (e.g. but –> however, around –> approximately)
ということ。ただし、今回のサービスでは、単に直された原稿のみが返されて、それとは別のコメントというものはなかった(おそらく別料金)。したがって、直された箇所それぞれが、上記のうちのどれだったのかは正確にはわからないことが多かった。
具体例
単語・熟語
順番は適当。
- a/the/複数形の修正(死ぬほどたくさん直されていた。勉強になった)
- figure 3A, C –> figures 3A, C(subfigure を指すときに複数形が正しいことがわかった。しかし、figures 3A, 3C とどちらが(あるいはどちらも)正しいのかはわからない。直されなかったので今のがダメではないのだろうが…)
- minimize –> minimise(僕が British にし忘れてた)
- especially –> particularly(British?)
- merely, solely –> only(British?)
- though –> although(British? though の方が British だと思ってたんだけど…)
- but –> however(口語)
- around, roughly –> approximately(口語。roughly は一箇所残ってたが、around は一括置換されたかもというほど全部直されていた。相当嫌われるのか?)
- usually –> typically, generally(口語)
- sometimes –> occasionally(口語)
- much, a lot [of] –> considerably(口語)
- see, find –> observe(口語。find の方は全部ではないが see はおそらく全部直されていた)
- whole –> entire/entirely(口語?)
- so that –> such that(口語?)
- in general –> generally(理由よくわからず。全部ではないが、添削し忘れかも)
- while –> whereas(理由よくわからず。全部ではない。添削し忘れではなさそうなので違いがあるのかも)
- wingbeat cycle averaged force –> wingbeat cycle average force(「羽ばたき1周期で平均した力」の意味で、受け身っぽく ed 付けたらよくね?と思ってたが間違いだった)
接続詞の that は省略しない
修正頻度はこれが一番多かったかもしれない。直す方も精神的に辛かったのでは(いや、仕事か)。どうやら僕は癖なのかほとんどすべての接続詞の that を省略していたようで、それらが全て追加されていた。
therefore/thus の前後でのカンマとセミコロンの使い方
たとえば
A is defined as foo, therefore B can be written as bar.
のように書いていた部分が、次のようにセミコロンを使って直されていた。
A is defined as foo; therefore, B can be written as bar.
therefore のところが thus でも同様だった*1。
while/whereas の前には必ずカンマを入れるようだ
これはそのまま。おそらく全部直されていた。
ハイフンの使い方
非常に多くの語のハイフネーションが解除されていた。最初は「なんだよ、これがこの分野の慣習なんだよ」くらいに思っていたのだが、あまりにも何度も直されているのでパタンがわかった。どうやら、名詞を単に2つつなげるだけならハイフネーションしてはいけないようだ。じゃあどういうときにいいのかというと、その2つ(以上の)つなげた名詞を、さらに別の名詞に対する形容詞的に使いたい時だ。
実は考えてみると、これは思い当たる節があった。飛行機などの翼で、飛行方向側の縁(ふち)を「前縁(ぜんえん)」と呼ぶ。英語では leading edge だ。ところが「前縁の近くにできる渦」を意味する「前縁渦」は leading-edge vortex と書かれる。このことは知っていたのだが、これが一般的なルールだと気づいていなかった。ん?そういえば “15-year-old boy” とかなんとか、文法の授業でやったか…?あのへん、正直に言って、興味なくて聞き流していたのだよな…。
よく見ると形容詞的用法でなくても mid-foobar というのだけは解除されていなかった。なるほど、これは mid foobar にはできないもんな。なるほど…
キャピタルレターの使い方
固有名詞扱いにしたくて、わざと頭文字を大文字にしていたものが全て解除されていた。これについては反映するか無視するかを考え中。
そのほか
- 現在進行形・過去進行形 –> 現在形・過去形(結構たくさん直されていた)
*1:この2者の使い分けをハッキリわかっていないが、それはまた別の問題。