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【論文読み】The comparative hydrodynamics of rapid rotation by predatory appendages

aerodynamics biomechanics research 論文読み

だいたい書けたけどまとまらない…

対象

McHenry, M. J., Anderson, P. S. L., Van Wassenbergh, S., Matthews, D. G., Summers, A. P. & Patek, S. N. 2016 The comparative hydrodynamics of rapid rotation by predatory appendages. J. Exp. Biol. 219, 3399–3411. (doi:10.1242/jeb.140590)

何をしたのかまとめ

目的

  • シャコパンチにおいて、パンチ運動と腕形状の種による違いが流体力にどのように影響するかを調べること。
  • これには、本来はCFD*1がよいのだが*2、全てのパタンをCFDで計算するのは計算リソース的に大変なので、簡易的な流体計算であるBEM*3を使いたい、というか、使う。しかし、BEMは簡易版なので、正確性を検証しなければならない。そこで、流体力(抗力)によるトルクを評価指標として、BEMがCFDと比較して十分に使えるかどうかをテストすることも実質的には大きな目的となっている。

手法

書いてある順序ではなく、自分なりに整理すると次のようなこと。

  • シャコパンチの運動を文献から求める(4種)。さらに中型のスピアラー1種を自分で撮影して追加。運動は、どうやら carpus の根本を pivot とした2次元平面内の1自由度の回転運動として近似し、その角度を文献のスピアラー種からフィッティングで求めている。Phylogenetics を考慮した比較もしているようだが、意図がいまいちわからないので詳細は割愛。
  • 実物を元にしたシャコの腕形状・パンチ運動*4を使って、パンチのCFDを行い、抗力によるトルクを求める。このときのパンチ運動が、文献値なのか、上で求めたフィッティングの値なのかは不明瞭(おそらく前者)。
  • 上記の腕形状の作成時に用いた20程度の腕断面それぞれの位置を使って、BEMで計算を行い、その結果をCFDでの結果(トータルおよび断面ごと)と比較したい。そのためには、BEM に用いる抗力係数 Cd (eq. 5) が必要となる。これは次の方法で求める。

    1. 楕円柱の shape factor k = 0.015 を使って、eq. 6 から求める。
    2. 一様流CFDから:形状モデルはパンチ運動と同一。流速はパンチ運動での最大値(?)である 20 m/s として、定常・一様流のCFDを行う。計算結果から、20断面それぞれについての (Cd),i を出してそのままBEMの各ブレード要素に叩き込むのが一つの方法、もう一つは、楕円柱の式 eq. 6 で k = 0 とし、全体の抗力 Fd がCFD結果のものと等しくなるように、各ブレード要素の (Cd),i を決める方法。
  • 水路実験:ずっと勘違いしていたが、どうやら水路実験の結果はBEMに直接使われていない(!)。一応やっていることは以下の通り。3Dプリンタで作成したリアリスティックな腕形状モデル*5、および楕円柱を水路内に設置して、抗力を計測する。このとき、腕の先の方 (dactyl) を閉じた状態と開いた状態の2パタンを調べる*6。ここから shape factor k を求めるようだが…どうやって求めたのかがわからない。腕模型との抗力の差が小さくなるように、楕円の短軸・長軸を変えていったときの楕円柱の k ということだろうか? ("range of long elliptical cylinders with different aspect ratios" はここにも適用されているのかも)いずれにしても、この結果がBEMには使われていない。また、なぜか BEM で使っている種である G. smithiik は 0.1 程度であり (Table S3)、BEMの楕円柱仮定の 0.015 とは一桁も違う。どういうことなの…。結果のところでは、むしろ「7倍も違うのにBEMの結果はこんなに合ってるぜ!」みたいに書いているが、え、それは、どうなんだ…

  • トルク以外にエネルギでも評価している。

  • BEM を使って、3種のシャコのパンチ運動について、3つのパラメタを振って sensitivity analysis をしている。

結果

やってることが多く、それぞれのブランチで結果がいろいろある。しかし、このうちCFDやBEMに持っていく結果は一部だけ(水路実験の結果は使ってないし)。しかも、手法に書いてある順番とは異なる順番で結果が羅列されており、読みづらい。

  • 水路実験では、閉じた状態での腕形状が長手方向 (spanwise) に一葉に近いスピアラーでは、腕の先の方を開いても抗力がほとんど変わらなかった*7。一方、閉じた状態で腕の先の方が(流れの前後方向に)膨らんでいるスマッシャーでは、腕を開くと抗力が増加した。それぞれの種のshape coefficient k を求めた。スピアラーの C. scolopendra は楕円柱と似た 0.015 だった。
  • 一様流とリアリスティックなパンチ運動のCFD結果は全然違う(当然)。
  • BEMとCFDの結果の比較
    • ただの楕円柱ベースの抗力係数を使ったBEMでは、パンチ後半の時間帯でトルクがCFDと大きくずれる。
    • 一様流CFDを使って抗力係数を求めた2つのBEMでは、時間的にはトルクがCFDとよく合った。しかし、各要素について比較すると、いずれのケースでもかなり…全然合ってない。とくにspanwise location 80%くらいのところで、CFDでは正のトルク(腕を加速する方向)がわずかにみられる*8のに、BEMでは大きな負のトルクが生じている。つまり、定性的にすら合っていない。が、結論としては「トータルがあっているからよかったよかった」というような論調…。そして要素ごとのずれについては色々と説明しているのだが、突然迎え角の話が出てきて、よくわからないのが正直なところ。消化不良で終わってしまった。
  • sensitivity analysis では、「上腕部分の長さがトルクに一番効くよ」というようなお話。

Comments

Major points

  • なぜカメラ1台だけの撮影で2次元平面内(1軸まわり回転)の運動と言える?

    • 仮にそれが言えたとして、取り付け角*9は全ての断面で0度、つまり「ねじりなし」なのかどうかが明確でない。→ いまいちハッキリしないが、ESM Fig. S2 によると翼型は対称かつ「ねじりなし」のようだ。

      Note that the model assumes mirror symmetry about the sagittal plane through the long axis of the appendage.

    • http://dx.doi.org/10.1242/jeb.061465 の Fig. 5B の micro-CT を見ると、確かにこの一断面については対称でも良さそうだ。ただし、元論文に戻って ESM の Fig. S2B を見ると、左側の要素軸の平板的な図では断面が(翼型的に言うと上下が)場所によっては若干非対称なのに*10、右の3Dっぽい図では対称にしている。これがどれほどの影響を与えるか…。微妙なところだろう。単純化して一般化したいのはわかるのだが、この非対称性が negligible であるとか、なにかしらの justification ができれば欲しかった。たとえば、航空機と違って、このRe域において、この程度の非対称性は小さな違いしか生まない、ということを示すと良かった。

  • 「BEMをCFDと比較して、十分使えることを示す」要素ごとのトルク全然合ってない問題」(Fig. 6G-I) について、色々と言い訳をしているが、結局なぜこれでよいのかはよくわからなかった。

General comments

  • 色々とやっていて、ぜんぶ入れたくなるのはわかるのだが、やったこと同士の関係がわかりづらい。
    • たとえば自分ならどうするか考えてみると、一案として、3Dプリントモデルでの水路実験と20 m/s での一様流CFDは「一様流」という扱いでまとめる。その結果の詳細はESMに押し込め、本文には概要のみを記し、「これによってBEMに用いる Cd を決定した」という話の流れを明確にする。その上で、CFDのモデルと結果、BEMの手法・結果、そしてこれらの比較、という主題に集中する。
  • とはいえ、そもそも「BEMをvalidationしたい」が主題というのは、どうなのだ?と思った、が、←これは僕の勘違いだった。実際には種による違いの比較(が、少なくとも建前)。イントロの最後で3つの副題的な questions を挙げていた。これは素直によいと思う。
  • 揚力についての言及が一切ない。これは後でわかったが、おそらく流れに対して翼厚方向に完全に上下が対称な断面形であるとし、かつどのspanwise位置でもAoA*11=0度としているからだろう。しかし、この対称性についての説明は、 ESM で形状についてあるのみで、AoA が本当に0度なのかどうかは結局不明確だった。シャコパンチ業界では常識なのでいちいち言及されないのかもしれないが、書くべきだ。
  • 書いてなかったと思うのだが、dactyl が strike の最中に closed → open に変動する、ということはないのだろうか?おそらくそれはなくて、stroke の最中は既に open or closed どちらかだけなのだろうが…。

水路実験

  • Fig. 4: 細かいことだが、Aはモーメントアームの関係を使って求めるのならアームの長さも書くべきだろう。Bは流れの方向がわからない。腕の上腕側 (propodus) の長手方向が流れに垂直になるようにしている、のか?そして角度はその1パタンしかやっていないのか?

Kinematics

We approximated the strike kinematics of each species using one average strike from L. maculata

として eq. 3 を算出して、他のシャコパンチ運動を決定しておきながら、

Calculations of the mean-squared error (MSE) for the fit ... indicated that the spearer, L. maculata, exhibited substantial variation not represented by Eqn 3.

っていいのか…?統計の話がわからないので、なにか騙されてるような感じがするのだが…

  • assuming pure 2D but how realistic is it?

CFD

  • 回転中心は実物でのどこ?よくわからない
    • pivot を中心にした単純な回転のようだが、本当にそうなのか??(加賀谷さんも気にしてた点)
    • 根元側(回転中心側)が突然裁ち落とされているように見えるのだが (Fig. 6) 実際には当然まだ体のどこかが続いているはずだ。つまり根元側の速度が十分に小さいという前提が必須になるのでそれは明確に述べておかないと。「胴体がなくても流れ場に影響しないの?」というのは羽ばたきでは定番のツッコミのひとつ。返しとしては、ホバリングでは wing proximal sections の速度は小さいから、まぁそんなに影響しないんじゃない、という感じ。経験上は、たしかに流体力にはあまり影響しないが、流れ場の見た目は結構違う、つまり、proximal sections の「要素に注目した」議論はあまり信頼できない可能性がある。たとえば Fig. 6A の下にある要素ごとの C_d のプロット、Position < 4 で2D楕円と全然違うが、これは root vortex の影響かも。Tip 側で合ってないのも同様に tip vortex の影響かも。
  • というか、Fig. 6H, 6I, CFDと全然あっていないが、大丈夫なのか?特に spanwise location で70-90%程度の、回転体の流体力で一番大事なところが全然あっていない。spanwise方向に積分した(要するに全部を足した)トルクである Fig. 6E, 6F では合っているが。6F が合うのは、合うようにしているから合っているように見えるのだが、なぜ 6E が合うのかがよくわからない…偶然ではないの?これだけ要素レベルで合っていないものが本当に汎用性があると自信を持っているのか?
    • よく見たらここの言い訳に相当な紙幅を費やしていた。local AoA とか唐突にいい出しているが、そもそも AoA が定義されてすらいないし、CFD用モデルの各要素での AoA も全然わからないし(ゼロじゃないの?)、非常に読みづらい。
    • これが「wing root or wing tip ですごくずれちゃってます」なら良かったんですよ、別に。プロペラで一番大事な60-80% spanwise locationでこんなに違うってのは…
    • たとえば「いくつか条件を変えてCFDしてみよう」とはならなかったのだろうか…計算リソースの問題かな。具体的には、Fig. 8 でパラメタを変えてBEMで simulate しているが、この中から数点だけでもCFDやってみて、BEMの結果と比較して、「やはり要素レベルでは合わないが、total (sum) では合ってる」といえば、だいぶ説得力は上がると思うのだが。

ミス・typoなど

  • Fig. 8 のシンボルの説明、キャプションでは closed circle が dactyl closed, open square が dactyl open とあるが、8A内のレジェンドは逆になっている。UI的に考えてキャプションが正しいだろう、たぶん。

*1:Computational fluid dynamics.

*2:実験的に、形状と運動の両方が正確なパンチをするのは大変だからだろう。また、そこでさらにPIVするのもつらそうだ。

*3:Blade element method.

*4:1種。スマッシャー。

*5:5種。CFDと同じスマッシャーを含むスマッシャー2種・スピアラー2種・どっちでもないやつ(?)1種。

*6:スマッシャーは閉じた状態、スピアラーは開いた状態が自然らしい?

*7:と、言っているが、本当だろうか。よくわからない。が、一様流の結果にそんなにツッコんでもしょうがない気もする。

*8:1つの位置のみ。ほかは全部値は異なれど負の値。

*9:angle of incidence, AoI; 今の場合は迎え角 angle of attack, AoA と同じ値になる

*10:pivot も図で中央よりやや右寄りにある。しかし運動が完全に2Dだと言うのならこの位置は問題にはならない。

*11:angle of attack