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LEV on a penguin flipper?

ペンギンの本 [amazon.co.jp] を読んでてフリッパー上に LEV (leading edge vortex, 前縁渦) あんのかなぁ?と思っていたら、やっぱ研究してる人たちがいた

http://meetings.aps.org/Meeting/DFD10/Event/132842

実際のペンギンのフリッパーの kinematics で robotic flipper を羽ばたかせたようだ。Re = 10^4 でやったら LEV があったようだ。

しかし本当のペンギンは、およそ 7 km/h で泳ぐ(これは本の情報)。遊泳速度 V = 7.2 km/h とすると 2 m/s である。水の動粘性係数 nu はほぼ 1.0 x 10^-6 m^2/s である(常温の真水だがとりあえず)。フリッパーの平均翼弦長 (mean chord length, c_m) を 5 cm と見積もると(フリッパーの長さデータがあって、あと写真から AR=4 くらいに見えたので適当に)、
Re = V c_m / nu = 2 * 0.05 / 10^-6 = 10^5
であり、アブストにあるとおりこの実験より一桁大きい。さらに当然、フリッパーの羽ばたきによる速度が加わる。したがって実際に LEV が出るかどうかは状況によるかもしれない。たとえば加速時、大推力が欲しい時にはちょうど Re が小さく、LEV により効果的に大きな流体力を得ることができるのかもしれない。巡航状態では Re が大きく、フリッパーの羽ばたき角自体も小さい(だろうたぶん)ため、LEV はできないかできてもすぐ消滅し、結果的に揚抗比の増大すなわち効率の改善に役立っている、というストーリが描けそうだが、どうだろうか。

今年の頭だったか、 Science か Nature に「フリッパーに取り付ける識別タグが死亡率を増大させている」という話が出ていたが、「LEV の発生を阻害し、
predator から逃げる際の急加速が十分に行えなかったため」なんてことはないだろうか。これは完全な妄想…もとい、憶測だが、ストーリ重視でこれくらいハッタリかましてかなきゃ NS には載らないようなので頑張る。ってかシャチの強さチートだろこれ…エンペラーペンギンを丸呑みとかどんだけ…

また面白い点として、フリッパーは他の鳥の翼と違って関節が根元しかないということがある(passerine birds と同じ?)。もちろん翼自体がある程度受動的に変形することはあるだろうが、能動的な制御は根本しかできない。これは昆虫の翅とよく似ているのではないか。

もう一点、フリッパー上の、というか全部みたいだが、羽根は羽軸について対称な形をしているらしい。つまり羽根一枚一枚では揚抗比はあまりよくない可能性がある(まさかの層流翼という線も…?)。もしフリッパー全体として一枚の膜翼とみなしてほぼ問題ないなら、ますます昆虫の翅と似ていることになる。

なんでこの人達が 10^5 でやらなかったのかは不明。将来やるみたいに書いているが。しかし 10^4 はともかく 10^5 となるとシミュレーションはなかなか大変だ。結局乱流遷移をどうするかが問題なんだよなぁ…

そういやこの本に書いてたんだけど The Auk ってもともとペンギンと呼ばれていたオオウミガラス [ja.wikipedia.org] が絶滅してしまったことの記念というかなんというか、そういう理由だそうだ。英名が Great Auk [en.wikipedia.org] なんだね。たしかに en.wp の記事にもそう書いている( The Auk の記事にも)。

しかしペンギンかわいいな
いやペンギンがっていうかペンギンの絵が、かもしれんが